15.
2005. 2. 22.
フェスのメディナが、モロッコで初めてユネスコの世界遺産として登録されたのが1981年。以来、2004年に新たに登録されたマサガン(アル・ジャディーダ)のメディナを含め、モロッコからは8つの世界遺産が登録されている。
フェスは、808年にムーレイ・イドリスU世が遷都して以来、繁栄・衰退を繰り返してきた古都である。その街、人々、そして生活そのものが、丸ごと後世に残すべき遺産として認められたのだ。その保存の為に大量の金・援助が投入され、登録された遺産の街を一目見ようと、観光客が大勢押し金をばら撒いて行った。
…しかし、援助は末端まで届かず一部の人間の私腹を肥やし、観光客が土足でメディナを踏み荒らし残していった足跡は、少なからずそこに住む人々に影響を与えた。1000年の昔より変らぬ生活を続ける人々・街が、それを後世へ残さんとして作った人間の制度によって壊されていく。
遺産として「登録」されたが為に、本来の姿を失ってしまった文化や自然、そして人々。モロッコだけでは無く、そんな例は世界中に溢れている事だろう。
フェスのメディナ。
タラア・クビーラ(大きな坂の意でメディナのメイン通り)を歩くたびにそんな失意の念に駆られ、(私もそれに荷担している側の人間なのだが)思わず足を早める。しかし、そんな作られた喧騒に疲れ通りを一本入ると、そこには周りで騒ぎ立てる人間の声が届かない場所があり、人々が1000年前と変らぬ生活を営み、街は今日も静かに呼吸する。後世に語り継ぐべき遺産、その本当の姿を垣間見た気がして、ホッと安堵のため息をつき今日も私はメディナの懐深くへと埋もれていく……。