5.
2004.12.11.
「ッサラーム アァライコム」(あなたに 平和を)で始まるモロッコの挨拶。白い息を弾ませ坂道を上り、落ち葉の積もった川沿いの公園を抜け
まだ朝の張り詰めた空気が残る職場へ辿り付くと、同僚からそんな声が掛かる。モロッコの挨拶はここからが長い。
「元気か?」「全て元気か?」「問題ないか?」「健康か?」「家族は元気か?」「全員元気か?」「問題ないか?」「母親は元気か?」「父親は?」「兄弟は?」「親戚は?」……
ガッチリと握手を交わしながらそんな挨拶が矢継ぎ早に続く。そして最後は「ハムドゥ リッラー」(アラーのお陰で)、この言葉で長い挨拶がようやく終わる。
彼らにとって挨拶はとても重要な文化の一つだ。どんな狭い道でも、後ろに人がつかえようとも、重い荷物を持っていようとも、子供が泣き喚こうとも、周りの迷惑も顧みず、永遠とも思える挨拶が続く。
時には頬と頬をすり合わせビズを交わす。男同士だろうが関係ない。握手の体勢から体をグイと引き寄せられ、髭面の頬に私の頬がスリスリ、ジョリジョリ。右、左、右、左…
「右の頬をビズされたら左の頬をも向けなさい」そんな言葉は新約聖書にも、もちろんコーランにも書かれてはいないが、どうやら偶数が良いらしい。そして大人数の人と挨拶を交わす時は、必ず右側から始める。そういうものなのだ。いろいろと決まり事があるのだ。
長ったらしい挨拶は、急いでる時にはたまったものではない。だけど、やはりコミュニケーションはとても大事。心はイライラしつつも、今日も髭面のオヤジ共との挨拶が続く。スリスリ、ジョリジョリ。右、左、右、左…