6.
2004.12.22.

 

「アッラー アックバル」(アラーは偉大なり)。今日も一日の終わりを告げるように、夕闇の静寂を破りアザーンが流れる。僕は仕事を終えてメディナを突っ切って家路につく。メディナの喧騒の中を、お祈りをしにモスケへ向かう人波の中を、アザーンを聞きながら家への坂道を下る。もう何度となく繰り返されてきて、今では日常の一部となり擦り切れてしまった風景。アラブの小さな街で暮らしている。そんな事を実感できる大好きな風景だ。

 

メイン通りに掛かる橋を渡ると、正面にサンドイッチ屋の店先が見える。もうもうと上がる煙。空腹を刺激するクミンの臭い。あぁ、もうタマラン!今日は外食する事に決めた。

 

変なエプロンを掛けて、いつもロボットのような正確な手付きでケフツァを焼く髭面のオヤジから、大きめのサンドイッチを受け取る。何処から拾ってきたのではないかしら?と思わずにはいられないベンチに腰掛け大口でガブリ。パクチーと玉ねぎが香ばしい。続けざまにガブリ。

 

フト目を上げると、こちらをじっと見つめて小さな手のひらを差し出している少女が佇んでいる。この手の子供はいつも無視するのだが、今日は何故だか自然に手が動いていた。メディナの喧騒が、大好きな風景が、そうさせたのかも知れない。黒いビニール袋から、さっき買ったアーモンドを一握り取り出し、小さな手のひらにそっとのせる。少女は少し微笑むと弾かれたように踵を返し、メディナの雑踏の中へ消えていった。

 

家族が待つ家へと帰っていったのだろうか?兄弟はいるのだろうか?皆で食べてくれると良いな…。そんな事を考えながら、サンドイッチの最後の一口を頬張り立ち上がると、少女の後を追うように、僕も雑踏の中に紛れた。

 

【ちびこばくん便り】

 

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